航空管制の世界には、航空法、航空法施行規則、管制方式基準、航空保安業務処理規程、管制業務運用要領、業務処理要領、協定書、調整要領など、実に様々な規程書、基準書があり、各管制官は、これらに則って絶対安全を確保しつつ管制をしなければなりません。 ただ、我々バーチャル管制官にとって、これらの基準書は、あまりにも専門的すぎて難解なものとなってしまっています。 FSパーティの場において、ここまで専門的な知識は必要ないでしょうから、これらの小難しい基準書を実際の運用手順に則って平易にまとめあげたのが、本書です。 −−−−−−−−−−− クリアランス管制官は、打ち出されたStripを見て、クリアランス内容をパイロットに伝達するのが仕事です。 まず、パイロットより管制承認の要求を求められます。 それを聞いたクリアランス管制官は、事前に打ち出された管制Stripを参照して、コールサインや目的地などに間違いかないかチェックして下さい。 それからクリアランス管制官は、周りの管制官にその航空機に対してクリアランスを発出して良いかどうか確認します。 無事、クリアランス発出の許可が得られたならば、該当のパイロットを呼び出して、クリアランス伝達の用意をさせます。 パイロット側の準備が整っていると、「ゴーアヘッド」と返してきますので、打ち出されたStripを見ながら、クリアランスを正確に伝えます。 クリアード・トゥ・***エアポート・バイア・***デパーチャー・ 正確に伝えたら、パイロットが復唱しますので、それを聞き取って間違いが無いかチェックして下さい。 もし、間違いがあれば、その間違えているところのみもう一度伝達します。 正確に復唱されたなら、「リードバック・イズ・コレクト」 その後続けて、グランド管制にコンタクトするよう指示を出します。 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをグランド管制官に速やかに手渡して下さい。 −−−−−−−−− グランド管制官は、空港内の滑走路を除くすべての区域を移動する航空機・ まず、パイロットよりプッシュバックの許可を、自機の位置を通報しながら、求めてきます。 グランド管制官は、その航空機の位置を確認し、プッシュバックする方向に他の航空機等が無ければ、プッシュバックの許可を出します。 その時に、使用滑走路も同時に伝えることになっています。 そう伝えると、航空機は滑走路32へ向かう為に、機首をその方向に向けて、プッシュバックします。 プッシュバックが完了したならば、再びパイロットがタキシングの許可を求めてきます。 タキシングを許可する場合、タキシングの最終点を述べて通過経路も同時に述べていきます。 この時、タクシーウェイ番号には、フォネティックコードを使用します。 そのあと、タキシングが終わったあとの動作も指示しておきます。 滑走路終端に航空機が近づいてきたら、タワー管制にコンタクトするよう指示を出します。 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをタワー管制官に速やかに手渡して下さい。 −−−−−−−−−−− タワー管制官は、航空機に離発着の許可を発出したり、空港周辺を飛行する まず、パイロットより、タワー周波数に入った事が通報されます。 それを受けて、そのまま滑走路の手前で停止させるのか、滑走路へ進入させるのか、等の指示を出します。 滑走路への進入指示を出すときは、 その後、離陸許可を発出する時には、ディパーチャー管制官に、あらかじめ該当の航空機を離陸させてもよいかどうか、確認して下さい。 ディパーチャー管制官から、該当の航空機を離陸させても良い旨伝達されたなら、いよいよ航空機に離陸許可を発出します。 例).JAL***、ウィンド***アト**、クリアード・フォー・テイクオフ・ 該当する出発機が、地面を離れ上昇を続けている事を確認したら、なるべく早い段階で、ディパーチャー管制に引き継いで下さい。 例).JAL***、コンタクト・ディパーチャー・チャンネル・** なお、既に管制承認の時にディパーチャーのチャンネルはパイロットに伝えてあるので、この時には、必ずしもチャンネル数を伝える必要はありません。 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをディパーチャー管制官に速やかに手渡して下さい。 −−−−−−−−−−−−−− ディパーチャー管制官は、空港を出発した航空機に対し、空港近辺から航空路までの主に上昇過程の部分を管制するのが仕事です。 まずパイロットから、現在上昇中の高度と到達しようとする高度が報告されます。それを受けて、レーダー画面にきちんと機影が捕捉されているか確認し、同時に報告された高度とレーダー画面に表示されている高度に差がないかも併せて確認します。 もし、レーダー画面に表示されている高度と報告された高度に300feet以上の差がある場合は、もう一度パイロットに高度を確認した上で、まだなお差があるときは、それ以降レーダー画面に表示される高度をそのまま管制に使用することはできませんので、注意して下さい。 きちんと機影が捕捉され、高度情報にも問題がなければ、「レーダー・コンタクト」の用語を使用して、当該航空機がレーダー管制下におかれたことを、パイロットに宣言します。 その後、レーダー管制下の状況終了を宣告するまで、航空機のセパレーションに関しては、管制官が責任を持つことを認識しておいて下さい。 その後、管制Stripに記入されている管制承認時にパイロットに伝達された制限高度情報をもう一度伝達し、その高度まで上昇して一旦水平飛行に 例).JAL***、***デパーチャー、レーダーコンタクト、クライム・アンド・ もし、空域がすいている等で、高度制限を設ける必要の無くなった場合は、速やかに制限の解除を宣告し、上昇を続けるよう指示を出します。 例).JAL***、リストリクション・キャンセル、クライム・アンド・メイン この時、いきなり巡航高度までの許可を出すことは普通できず、自分の担当している空域の上限までの指示を出すことになります。 飛行経路に関しては、特に指示を出さなければ、管制承認の時に伝達されたSIDとトランジションルートをトレースして飛行します。 空域が混んでいるなどの場合で、航空機をレーダー誘導する必要がある時は、向けさせる機種方向を指示します。その時、最終誘導目標も伝えることになっています。 例).JAL***、フライ・ヘディング・***・フォー・ベクター・トゥ・*** また逆に、空域がすいていてSIDをトレースしなくてもいいような場合は、現在地点から直行すべき地点(FIX)名を指示します。 例).JAL***、プロシード・ダイレクト・***・レスト・オブ・ルート・ 航空機が、自分の担当する管制空域の境界線近くまで飛行したなら、次の管制官に、管制移管の意向を伝え、航空機にコントロール管制に 例).JAL***、コンタクト・***コントロール・チャンネル・** 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをコントロール管制官に速やかに手渡して下さい。 コントロール管制は、主にエンルート上の航空機を管制するのが仕事です。 まず、パイロットから、維持している高度、もしくは上昇中であれば、現在の高度および到達しようとする高度が報告されます。 それらの情報をレーダー画面でそれぞれ確認して下さい。 ですが、引き続きレーダー管制下にあるので、「レーダー・コンタクト」の用語は使用する必要はありません。 通報された内容に相違がなく、また変更がなければ、そのまま通報を受信した旨だけ応答すればいいことになっています。 例).JAL***、***コントロール、ラジャー もし、その後巡航高度まで上昇してもいい場合は、ここで上昇の指示を出します。 例).JAL***、***コントロール、クライム・アンド・メインテイン・FL*** その後、空域がすいている場合には、なるべく直行指示を出すようにして下さい。 例).JAL***、プロシード・ダイレクト・***・レスト・オブ・ルート・ 次は、いよいよ降下の指示です。 次の管制官に引き継ぐときに、決められたある地点(FIX)までに高度**フィートまで降下させてから移管させるようにあらかじめ取り決めがされています。 その情報は、あらかじめ次の空域を担当する管制官と相互に確認し合っておいて下さい。 コントロール管制官は、その決められた地点(FIX)までに決められた高度まで降下させるため、あらかじめ余裕を持って降下の指示を出して下さい。 比較的空域がすいている場合には、パイロットの判断で降下の時期を決めてもらうことも可能です。 例).JAL***、ディセンド・アンド・メインテイン・FL***・アト・パイロッツ・ 航空機が、自分の担当する管制空域の境界線近くまで飛行したなら、次の管制官に管制移管の準備を伝えます。 このとき、航空機が指示した高度まで降下していればそのままアプローチ管制にコンタクトするよう指示を出します。 例).JAL***、コンタクト・**アプローチ・チャンネル・** もし、指示された高度まで降下していない場合は、速やかに降下させる意味で、その移管される地点(FIX)を、**フィート以下で通過するように指示を出します。 例).JAL***、ディセンド・アンド・メインテイン・FL***・アンド・ その確認がパイロットから復唱されたら、いよいよアプローチ管制へ移管するよう指示を出します。 例).JAL***、コンタクト・***アプローチ・チャンネル・** 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをアプローチ管制官に速やかに手渡して下さい。 −−−−−−−−−−−− アプローチ管制は、目的空港へ向けて着陸しようとする航空機に対し、目的空港への最終着陸態勢に入るまでの、主に降下過程の部分を管制するのが仕事です。 今までの管制の仕事の中でも、このアプローチ管制はもっとも難易度の高い部類に入る管制です。 まず、パイロットから、維持している高度もしくは降下中であれば、現在の高度および到達しようとする高度が報告されます。 それらの情報をレーダー画面で確認して下さい。 あらかじめ、アプローチ管制官は、目的空港までの誘導経路を頭の中で思い描いておいて下さい。 だいたいはSTAR通りで問題はありませんが、空域が混んできますと、STAR通りでは安全間隔を維持させながら誘導するのは困難になってきます。 それと並行して、適正に降下の指示を出していきます。 空港まで誘導したなら、最終着陸態勢に移るまでに、アプローチの方法を許可しなければなりません。大体は、ILSアプローチです。 例).JAL***、クリアード・フォー・ILS・ランウェイ・32L それから、航空機が目的空港の十数マイル手前に来たら、タワー管制に移管します。 例).JAL***、コンタクト・***タワー・チャンネル・** 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをタワー管制官に速やかに手渡して下さい。 −−−−−−−−−−− タワー管制官は、出発の時と同じで航空機に離発着の許可を発出したり、空港周辺を飛行する航空機を管制するのが仕事です。 まず、パイロットより、航空機がどの位置にいるかが通報されます。 それを受けてタワー管制官は、着陸する先行機がいれば、何番目の着陸となるのかをあらかじめ通報し、ある地点まで飛行したら、再びタワーを呼び出すように指示を出します。 例).JAL***、***タワー、ユー・アー・ナンバー*、リポート・ 再び、航空機側から呼び出しを受けたら、次の動作を指示します。 例).JAL***、ナンバー*・*マイル・オン・ファイナル 先行機が着陸し、滑走路が使える状態となれば、速やかに着陸許可を発出します。 例).JAL***、クリアード・トゥ・ランド・ランウェイ・**、 無事、該当する到着機が着陸し十分に減速できたなら、どの誘導路へ入るのかを指示します。 例).JAL***、ターン・レフト・アト・***、アンド・コンタクト・ 無事、管制移管が行われたなら、管制Stripをグランド管制官に速やかに手渡して下さい。 −−−−−−−−−−− グランド管制官は、出発の時と同じで空港内の滑走路を除くすべての区域を移動する航空機・車両に移動許可等を発出するのが仕事です。 まず、パイロットより、現在どこの誘導路上にいるかが通報され、同時にどのスポットへ進みたいかが通報されます。 例).***グランド、JAL***、***タクシーウェイ、スポット・** それを受けて、グランド管制官は、誘導路の通過経路を通報しながら、該当スポットまでの地上走行を許可します。 例).JAL***、***グランド、タクシー・トゥ・スポット** そのまま無事、該当の到着機がスポットインしたところで、管制官の仕事は終わりです。 以上、管制通信の要領及び用語を説明しましたが、上記交信例はあくまでも例ですので、実際にパイロットと交信するときには、状況に応じて言い回しを変えるようにして下さい。 −−−−−−−−−−−
グレーの部分は、VA(架空の航空会社)です。 読み方: エアライン名の後の数字は、一文字ずつ発音します。 JAL 101 (ジャパンエア ワン・ゼロ・ワン) ANA 19 (オールニッポン ワン・ナイナー) −−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−
注)
|